私好みの新刊 2025年3月
『にじ』武田康男 監修/写真 小杉みのり 構成/文
岩崎書店
久しぶりに小学校低学年児向きのにじの本が出た。にじの本は今ま
でに時々出ているが、いずれも低学年児にはちょっと理屈が多く読
みにくかった。以前に永田英治・伊東美紀さんの絵船がでていたが
(「にじってなあに」1995 大日本図書)、こちらはにじを作って遊
ぶ方向に進めていた。
今回本は理屈ははぶいて、きわめて感覚的に場面場面ごとの美しい
写真をつなげて見せている。子どもたちはこの本で「にじっていろ
んなところで見えて美しいな。」とにじの美しさに引かれるのでは。
にじの美しさを前面に出した本である。
内表紙を開くとにじのクローズアップ写真、にじは何色にも見える。
次のページをくると、森は雨、クモの巣の大きな雨粒、太陽が雨粒
を照らす場面、「そらが にっこり わらっていたよ。」と綴られ
ている。水玉写真でにじの起こる原因を暗示させているのかな。あ
とは、大空のにじ、あめあがりに「たいようとはんたいがわの そ
らを みてごらん。」とあんににじの見える方向を指している。
次は、雨雲の写真と太陽の光が差し込んでくる場面。さっとむ日の
光が目に差し込んでくる。すると、また大空のにじの写真、「たい
ようの ひかりなんだよ。」とつづる。次は太陽の写真と、にじの写真。
「どうして たくさんのいろの にじに なるの?」と疑問を投げかけて
いる。そしてまた美しいにじの写真。「あまつぶは、みずで できた ふ
しぎな れんずなんだよ。」と書いて次ページに大きな雨粒の写真が出る。
ここで、あまつぶの中でいくつもの光がわかれている写真があるといいな。
続いていくつものにじの写真が続く。白いにじもある。夜空のにじもある。
解説ではにじの色について触れている。よくにじの色は七色と書かれてい
るが、これは国によって違うそうだ。日本でも6色を主張している人もいる。
もともとにじの色は無限に続いている。何色に見えるかは人の感覚による。
2024年7月 1,300円
『水の惑星「地球」』BLUE BACKS 片山郁夫著 講談社
BLUE BACKSだが文章は平易で中高生なら読める。地球は宇宙でもただ
一つの液体水を
保有した星として知られている。液体の水のあるおかげで、地球には生
命が生まれ私たち人類も生きていられる。この本は地下も含めて、地球
が保有する水資源全体を取り上げて論じている。いったい多くの水は地
球のどこにあるのか。そして、どんな働きをしているのか。そして、将
来どのようになっていくのか様々の角度から論じられている。
地球の水は、岩石にも大量に含まれている。その岩石(海底玄武岩)は
海洋のプレートを通じ、海溝で潜り込み、そこで水が吐き出され、地下
のマグマに取り込まれて、火山活動で地上に吐き出されている。水は地
球を一巡しているという。今、その収支のバランスが崩れていて、約6
億年後には地球から海が無くなるという。なんとも壮大な話である。
地球は大陸プレートと海洋プレートとに分かれているが、大陸プレー
トの方は海洋プレートより軽い。大陸移動が起こる由縁にもなっている。
海洋プレートの沈み込み部で水が取り込まれ、新たなマグマが生まれて
大陸プレートを作っている。その大陸プレートが生まれるには水が大き
な働きをしているという。今も深海に熱水噴出孔がある。ここでは酸素
も乏しいのにたくさんの生命が生きているという。この話は今までにも
あったが、陸上の温泉地帯も生命活動に最適という。ここには好熱性の
微生物がわんさかいるとか。温泉が生命誕生の元という仮説もある。も
ちろん生命は宇宙からやって来たという説もありまだ決着はついていない。
地球の中で金属の液体が生まれたこと(外核)が生命進化を促進するもと
となった。地球にある液体の金属(主に鉄)のおかげで磁力が生まれ太陽
からの太陽風や宇宙線から地球が守られ動植物の繁栄が可能になった。
一方地球では、地球内と地上との二酸化炭素のやり取りのバランスもう
まく取れていたという。それが近年では人間による産業活動の結果崩れ
てきた。地球温暖化は益々加速するか。興味ある話が満載である。
2024年11月 1,000円